家族が高齢になると、食欲不振や栄養のかたよりの心配が増えていきます。
食べものを噛んだり飲み込んだりしづらくなった家族の毎日の食事作りに頭を悩ませている方もいるでしょう。
この記事では、高齢のご家族の食事が心配な方のために、介護食の作り方や市販の介護食の選び方、食事介助の仕方や食欲不振への工夫についてまとめています。
1.高齢者の食事:介護食の作り方と市販の介護食の選び方
①介護食は「噛みやすく」「飲み込みやすく」
介護食を作るポイントは、「噛みやすくする」「飲み込みやすくする」の2つです。
ポイント1:「噛みやすくする」 ~食材選びと調理の工夫~
【野菜】
・新鮮でやわらかい野菜を選ぶ
・繊維質の野菜(ごぼう、たけのこなど)を使うときは穂先などやわらかい部分を選ぶ
・野菜の繊維を断つ、隠し包丁を入れるなどの下ごしらえを工夫し、やわらかく仕上がるようにする
【肉】
・やわらかい部位を選ぶ。鶏肉の皮は取り除く
・焼いたり炒めたりするより、煮込みや蒸し料理で食べやすいやわらかさに仕上げる
・厚すぎると噛み切りづらい。トンカツなど厚みを出したいときには、薄い肉を重ねて厚みを出す
・薄すぎても噛み切りづらい。巻いて適度な厚みを出す
【魚介】
・やわらかく、小骨が少ない魚を選ぶ
・刺身は筋が少ないやわらかい魚を選ぶ(マグロ、ホタテの貝柱など)
・焼き魚は脂ののった魚や水分の多い魚を選ぶ(カレイ、銀だらなど)
ポイント2:「飲み込みやすくする」 ~とろみづけの工夫~
飲み込みやすさのカギは「とろみ」です。 とろみがついた食べものを「とろみ食」と呼ぶこともあります。
介護食のとろみづけには、「とろみ調整食品」(とろみ剤)が役立ちます。 食べものや味噌汁、飲みものに溶かすだけで簡単にとろみがつけられて便利です。
<とろみ剤の一例>
・つるりんこ(森永乳業クリニコ)
飲料のとろみづけに便利です。一度とろみがついたら時間が経ってもべたついたり水が出たりしにくく、「飲み込みやすさ」が変わりません。
・スベラカーゼ(フードケアジャパン)
お粥をはじめ、ほとんどの食材のとろみづけに使用できます。ミキサー粥やでんぷん食品特有のべたつきを解消します。
▼介護食のレシピサイトについてはこちら
②市販の介護食を活用して無理のない介護を
市販の介護食は、用事がたてこんでいるとき、介護する方ご自身の体調がよくないとき、また、外出するときなどに大変重宝します。
また、食べる方の「噛みやすさ」「飲み込みやすさ」に合ったかたさや形状、食べる意欲を高めるいろどりなども参考になります。
市販の介護食を上手に取り入れて、頑張りすぎない介護を目指しましょう。
▼メーカー別市販の介護食11選はこちら
③食事中にむせる・咳き込むは「嚥下障害」の黄信号?
食事中によくむせたり、咳き込んだりすることが続く場合には「嚥下障害(えんげしょうがい)」の可能性があるかもしれません。
嚥下障害とは、口の中の食べものを飲み込む「嚥下」の機能が弱り、食べものをスムーズに胃に送れなくなった状態をいいます。
以下のような症状が急に出はじめた、よく起こるようになった、という場合は、かかりつけの病院などに相談してみましょう。
【嚥下障害の可能性がある症状】
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食事中によくむせたり咳き込んだりする
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食事に時間がかかり、疲れて食べきれなくなる
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食べものを飲み込んだ後に声がガラガラにかれる
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食べこぼしが多くなる
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食後に胸やけがする
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食べているのに体重が減る
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のどや胸がつかえたような感じがする
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よく痰がからむ
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原因のわからない発熱を繰り返す
飲み込む力が弱まると、通常はのどから食道に送られるはずの食べものや唾液などが、誤って気管に送られる「誤嚥(ごえん)」が起きやすくなります。
誤嚥は肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こすことがあるため、誤嚥予防はとても大切です。
④飲み込む力が弱くなった人のための「嚥下食」
加齢や病気、病気の後遺症などで食べものを飲み込む力が弱くなった人のための、飲み込みやすさに特に配慮した食事を「嚥下食」と言います。
飲み込む力がおとろえても「口から食べる」ことは生きる力を回復する原動力になると言われており、嚥下食はそのための大切な役割を果たします。
病院や施設の看護師さん、栄養士さんなどと相談しながら、食べる方の飲み込む力(嚥下機能)に合わせた嚥下食を用意できるとよいでしょう。
▼嚥下食の分類(嚥下食ピラミッド)についてはこちら⑤口内炎があるときの食事
高齢の方のなかには、口内炎に悩まされる方も多くいます。口内炎のために食欲が落ちてしまうこともあるので、適切なケアが必要です。
口内炎の原因は以下のようなものがあります。
【高齢者の口内炎の原因】
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合わない入れ歯、歯の詰めものによる刺激
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入れ歯のつけっぱなし
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免疫力の低下
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長期間服用している薬の影響
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不十分な歯みがき
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喫煙習慣
口内炎にはさまざまな種類がありますが、通常は10日程度で治ると言われています。
入れ歯のお手入れなどの対処をしても1カ月以上治らない、治ったはずの口内炎が繰り返しできる、といった場合は別の病気が隠れている可能性も考えられますので、放置せず、医師に相談することをおすすめします。
口内炎ができたときの食事のポイントは2つあります。
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口内炎の改善に必要な栄養素を取ること:口内炎の改善に必要な栄養素は、粘膜の修復に効果があるビタミンB2、B6、Cと言われています。
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痛みをやわらげるため、食べかたにひと工夫加えること:食材をひと口大の大きさにしたり、とろみをつけたりすることで、口内炎への刺激が少なくなり、治りやすくなります。
▼口内炎があるときのおすすめレシピはこちら
2.高齢者の食事介助:ポイントは「できないところを手伝う」
ひとりで食事をとることが難しいご家族には「食事介助」が必要です。
食事介助の基本は、「自分でできることは本人にまかせ、できないところを手伝う」ことです。また、残さず完食することも大切ですが、食事にかける時間が長すぎると集中力が途切れ、誤嚥を起こすことがあります。食事にかける時間は30分を目安にするとよいようです。
▼食事介助のコツはこちら
3.高齢者の食欲不振:原因と工夫のポイント
ご家族が高齢になるにつれ、食欲不振や栄養のかたよりが気になる方も多いでしょう。
高齢の方の食欲不振の原因は主に5つあると言われています。
【高齢者の食欲不振の5つの原因】
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味覚が衰える
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噛む力が弱くなる
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飲み込む力が弱くなる
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精神的なストレス
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体調不良
高齢の家族の「食べられない」「食べづらい」状態が続いて低栄養が心配されるとき、注意しなくてはならないのが「フレイル」です。
フレイルとは、加齢によって心身ともにさまざまな機能が低下し、健康を損ないやすくなっている状態を指します。
フレイルは、「健康な状態」と「介護が必要な状態」の中間ですが、転んでケガをしたり、病気で入院したり、また、環境や人間関係が変化したり、といったことなどがきっかけで、要介護状態に進行してしまいます。
早い段階でフレイルに対処し、要介護状態への進行を予防することが大切です。
▼フレイル予防のポイントはこちらまとめ
本記事では、高齢のご家族の食事のお悩みを解消する工夫についてまとめました。
介護食作りに取り組む際は、食べる方の噛む力や飲み込む力に合わせて、「いつもの一品にちょっとひと手間」という気持ちで始めてみてください。
食事作りは毎日のこと。
頑張りすぎず、市販の介護食も取り入れてみることもおすすめです。
また、ちょっとした工夫で食事介助がスムーズになったり、食欲不振が改善することもあります。「こうすれば全て解決!」という方法はありませんが、ご家族にとって心地よさそうな方法を探してみてください。
猫舌堂は、全てのひとの「食べること」を応援しています。
がんや麻痺などによって食べることに苦痛を経験した方々が、食べる喜びを取り戻すきっかけを作りたい。そんな思いから看護師やがん経験者のメンバーによってオープンしたのが猫舌堂です。
猫舌堂のオリジナルカトラリー「iisazy (イイサジー)」は、「口を開きづらい」「一度にたくさん口に入れられない」など、食べることの悩みに寄り添い、嚥下障害のある方、介護食を召し上がる方、そして食事介助にあたる方、どなたにとっても使いやすいよう設計されています。
口の中に入る部分は1mm単位で削りだし、口の中で感じる微妙なズレを何度も改善しながら開発しました。
生きることは食べること。
食べることは生きること。
家族や大切な人との食事がもっと楽しくなるカトラリーが、食べることにお悩みがある方にも、そうでない方にも、「くちびるが感動する」体験をお届けします。
■iisazy スプーン(左)
一般的なスプーンは厚みと角度があるため、口に入れて引き抜くときに上くちびるに「ガチッ」と当たってしまいます。iisazyは薄く平たい設計なので、口が開きづらいかたでも口から「すぅー-っ」と引き抜けます。
■iisazyフォーク(右)
iisazyスプーン同様、薄く平たい設計です。幅が狭くフォークの歯が浅いので、パスタなどの麺料理もちょうどよい量を巻き取れます。