病気や高齢の家族のために介護食作りを始めた方から、
「介護食の基本的な作り方をきちんと知りたい」
「毎日の介護食の献立作りに追われている」
「せっかく作った介護食をあまり食べてもらえない」
と言ったお悩みの声を耳にすることがあります。
本記事では、噛む力、飲み込む力に合わせた介護食の基本的な作り方に加え、今日から活用できるレシピサイトをご紹介します。
食事作りは毎日のこと。 また、介護は食事作りだけではないので、無理は禁物です。
がんばりすぎず、介護される方もする方も、笑顔で過ごせる毎日を目指しましょう。
1.介護食とは
介護食とは、高齢や病気によって弱まった「噛む力」「飲み込む力」に合わせてやわらかさや飲み込みやすさを調整した食事です。食べられる量が少なくなっている場合は、低栄養状態にならないよう、少量で高カロリーが摂取できるよう配慮します。さらに、腎臓病、高血圧などの病気を持っている場合には、塩分やたんぱく質などの摂取量を抑えた介護食が必要となります。
食べる機能が弱くなったとしても、「口から食べること」をあきらめず充実した食生活を送ることで健康寿命が延びるとも言われています。ですから、食べる人の状態に合わせた介護食を用意することはとても重要なのです。
介護食の種類
介護食には以下のような種類があります。
【介護食の種類】
*とろみ調整食品:食べものや飲みものを飲み込みやすくするため、適度なとろみをつけられる食品です。「とろみ剤」とも言います。
上記に加え、たんぱく質やビタミンなど不足しがちな栄養分を効率的におぎなう、高カロリー飲料やゼリーと言った「栄養補助食品」もあります。
2.介護食作りの心構え
食べる楽しみは、「生きる楽しみ」に直結することがあります。
「食事」には、必要な栄養素を取り入れるだけでなく、食べもののいろどりや食感を楽しんだり、家族と一緒に笑顔で食卓を囲むことにも大きな意味があります。
介護食を作るにあたって、介護される方、介護する方のどちらもが笑顔でいられるよう、以下のポイントを心がけてみましょう。
1.介護食を「特別メニュー」と考えない
噛みやすさ、飲み込みやすさ、そして栄養バランスも考えて日々の介護食を作ることは、大変な作業です。 毎日、家族とは別メニューで作ったり、手間をかけすぎたりすると、介護する方の大きな負担になることもあります。家族のメニューに「ちょっとひと手間」かけるくらいの気軽さで取り組むことも大切です。 また、「やわらかい食材」にとらわれすぎず、「本人の好きな食べものをやわらかく調理する」と言う視点で献立を考え、本人の「食べたい」と言う意欲を高めることも大切です。
2.市販の介護食を活用してみる
繰り返しになりますが、食事作りは毎日のことです。 市販の介護食を活用することは、決して「手抜き」ではありません。 介護は食事以外にも、しなくてはいけないことがたくさんあります。 介護食作りに追われてしまうと介護する方の心も体も疲れ切ってしまいます。
近年、市販の介護食は味や形などにもさまざまな工夫がなされており、目にも舌にもおいしいものが増えています。また、食べる方の「噛みやすさ」「飲み込みやすさ」を配慮するうえでも参考になります。 値段が安いもの、レトルトパウチやフリーズドライで常温保管できるものも数多くあります。うらごしやミキサーなどの手間を欠ける時間が足りないときの頼れる味方にもなるでしょう。
市販の介護食に少し抵抗のある方も、がんばりすぎず、一度気軽に取り入れてみることをおすすめします。
3.介護食を食べやすいスプーンを使ってみる
介護食を食べる方には口を大きく開けづらい方も多く、通常のスプーンなどではスムーズに介助できないことが多いものです。
猫舌堂のオリジナルカトラリー「iisazy (イイサジー)」は、「口を開きづらい」「ごく少量ずつ口に入れたい」など、介護食を食べるご本人も、介護食の食事介助にあたる方も使いやすいよう設計されています。
一般的なスプーンは厚みと角度があるため、口に入れて引き抜くときに上くちびるに「ガチッ」と当たってしまいます。iisazyは薄く平たい設計なので、口が開きづらい方でも口から「すぅー-っ」と引き抜けます。
「今使っている介護用スプーンの大きさや薄さが合っていないかも…」とお悩みの方は、iisazy(イイサジー)スプーンをぜひお試しください。
3.介護食の作り方
介護食を作るポイントは、「噛みやすくする」「飲み込みやすくする」の2つです。ここからは、「噛みやすさ」「飲み込みやすさ」のそれぞれの工夫をご紹介します。
「噛みやすい」介護食~食材選びと調理の工夫~
【野菜】
- 新鮮でやわらかい野菜を選ぶ
- 繊維質の野菜(ごぼう、たけのこなど)を使うときは穂先などやわらかい部分を選ぶ
- 野菜の繊維を断つ、隠し包丁を入れるなどの下ごしらえを工夫し、やわらかく仕上がるようにする
【肉】
- やわらかい部位を選ぶ。鶏肉の皮は取り除く
- 焼いたり炒めたりするより、煮込みや蒸し料理で食べやすいやわらかさに仕上げる
- 厚すぎると噛み切りづらい。トンカツなど厚みを出したいときには、薄い肉を重ねて厚みを出す
- 薄すぎても噛み切りづらい。巻いて適度な厚みを出す
【魚介】
- やわらかく、小骨が少ない魚を選ぶ
- 刺身は筋が少ないやわらかい魚を選ぶ(マグロ、ホタテの貝柱など)
- 焼き魚は脂ののった魚や水分の多い魚を選ぶ(カレイ、銀だらなど)
「飲み込みやすい」介護食~「とろみづけ」の工夫~
飲み込みやすさのカギは「とろみ」です。 とろみがついた食べものを「とろみ食」と呼ぶこともあります。とろみがついた食べものや飲みものは、のどにゆっくり送られます。また、食べものがまとまって飲み込みやすくなるため、誤嚥を防ぎやすくなります。
とろみの3段階
とろみの強さは以下の3段階に分けられます(学会分類2013より)。
とろみ剤を活用する
介護食のとろみづけには、「とろみ調整食品」(とろみ剤)が役立ちます。 食べものや味噌汁、飲みものに溶かすだけで簡単にとろみがつけられて便利です。
つるりんこ
いろいろな飲料のとろみづけに便利です。一度とろみがついたら時間が経ってもべたついたり水が出たりしにくく、「飲み込みやすさ」が変わりません。
スベラカーゼ
お粥をはじめ、ほとんどの食材のとろみづけに使用できます。ミキサー粥やでんぷん食品特有のべたつきを解消します。こうしたとろみ調整食品のほか、「アガー」と呼ばれる植物性のゼリーも、とろみづけによく使われます。
天津飯や八宝菜など、主に中華料理にとろみをつけるときは「片栗粉」を使いますね。 しかし、介護食のとろみづけに片栗粉はおすすめできません。
理由はふたつあります。
まず、片栗粉でとろみをつけるには加熱が必要であること。
とろみ調整剤は加熱不要で、加えた分だけとろみがつきます。
また、八宝菜などを食べているとだんだんとろみがゆるくなった、と言う経験はありませんか?実は、片栗粉は、唾液にふくまれる消化酵素に分解されてサラサラになってしまう性質があります。最後のひと口までとろみを保つ必要のある介護食には、片栗粉は不向きなのです。
ぜひ覚えておいてくださいね!
介護食のレシピサイト4選
介護食を手作りするときは、レシピサイトもぜひ活用してみましょう。 さまざまなアイデアを取り入れることで、介護食のバリエーションが広がり、食べる楽しみだけでなく作る楽しみも増えることでしょう。クックパッド
検索窓に「介護食」と入れて検索してみましょう。
クリコのふわふわ介護ごはん
料理研究家・介護食アドバイザーであるクリコさんによる介護食情報ページです。介護食の基礎知識やレシピ集が掲載されています。
キューピー「やさしい献立」アレンジレシピ集
キューピーのレトルト介護食「やさしい献立」シリーズをアレンジしたレシピ集です。
ネスレ「介護食1週間レシピ」
常備菜を使って短時間で作れるレシピ集です。
「介護食コーディネーター」資格
安全でおいしい手作り介護食の作り方を本格的に学んでみたい方には、「介護食コーディネーター」と言う資格があります。介護食士や介護食アドバイザーの資格よりも手軽に受講でき、家族の介護食作りや自分自身の老後の食事作りに役立てられます。【学ぶ内容】
- 高齢者に必要な栄養知識
- 食事介助
- 衛生の基本知識
- 介護食の調理法やコツ
▶介護食コーディネーターの詳細はこちら(ユーキャン公式サイト)
4.市販の介護食の選び方
市販の介護食を選ぶときに、どの介護食が合うのか迷ってしまうことがあるかもしれません。介護食を選ぶときの参考になる基準のひとつに、「ユニバーサルデザインフード」区分があります。
どの介護食を選べばよいか迷ったときには、ユニバーサルデザインフードのマークがついた商品を選ぶのもおすすめです。
ユニバーサルデザインフード区分
現在市販されている介護食には、「ユニバーサルデザインフード」(UDF)のマークがついているものが増えています。
「ユニバーサルデザインフード」マークは、日本介護食品協議会が定めた規格に適合した、「食べやすさに配慮した」食品につけられており、「噛む力」「飲み込む力」のレベルに合わせて以下の4つの区分が明記されています。
- 区分1「容易にかめる」:固いものや大きいものはやや食べづらいが、普通に飲み込める人向け
- 区分2「歯ぐきでつぶせる」:固いものや大きいものが食べづらく、飲み込みづらいものもある人向け
- 区分3「舌でつぶせる」:細かくてやわらかいものは食べられるが、水やお茶が飲み込みづらいことがある人向け
- 区分4「かまなくてよい」:固形物は小さくても食べづらい、水やお茶が飲み込みづらい人向け
<ユニバーサルデザインフードの4区分表>
5.介護食は「噛みやすく」「飲み込みやすく」
介護食作りのポイントは 「噛みやすくする」「飲み込みやすくする」の2つです。食べる方の「噛む力」「飲み込む力」に合わせて食材を選んだり、とろみをつけたりすることで、食べやすい介護食を作ってみましょう。
食事作りは毎日のことなので、無理をしないことがなにより大切です。 市販の介護食もうまく取り入れて介護の負担を少しでも軽くしながら、介護を受ける人にバラエティに富んだ食事を楽しんでもらえるといいですね。
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